ちょっと役立つ進路の話

これから来る「理容業界」「美容業界」の動きとは?

「デフレ」「コロナ」後にやってきた業界の変化

理容・美容

理容師・美容師という職業の違い
理容師は「頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること」、美容師は「パーマネントウェーブ、結髪、化粧などの方法により、容姿を美しくすること」が、それぞれの法律で決められた条件です。端的に言えば、理容師は「髭剃り、顏剃り」ができますが、美容師はできません。
一方、美容師は着付けも業務範囲としています。国家試験は学科の他、実技試験がありますが、その内容は、理容師が「カッティング」「シェービング」が実技科目に入っているのに対して、美容師はロッドを巻き付ける「ワインディング」に加え、ウェーブをかける「オールウェーブセッティング」が実技科目に入っていました。近年は「オールウェーブセッティング」はなくなり、安全な施術に技術を要する「まつエク」に代わっています。
理容師・美容師とも厚労省が指定した養成施設を卒業し、そうした国家試験に合格する必要があります。美容師の合格率は60~80%であることに対し、理容師の合格率は50~70%程度。どちらも年に2回国家試験が行われます。合格者数は理容師が1000人前後に対して美容師が15000人程度とかなりの開きがあります。

理容業界
<全国の理容店数>112,468店
<理容師従事者数>204,883名
美容業界
<全国の美容室数> 269,889店
<美容師従事者数> 571,810名
(令和4年度 厚生労働省衛生行政報告例より)
国家試験
【理容師美容師試験研修センター】

理容・美容業界の課題


理容師・美容師いずれの職業も、1947年から1957年という戦後から高度成長期にかけて、公衆衛生と美容の観点から整備された法律に基づいたものです。そのため業務の範囲から国家試験科目まで「現代人のライフスタイルに合っていない」という声もありました。そこに端を発する課題として、以下のようなものがありました。

理容師の場合
理容師は店舗数・就業人口とも減少し続けています。
小規模規模業者が多く、また理容室は美容室に相対的して客単価も安いため資金調達も難しく、効率化・合理化にかけるコストにも限りがあります。 さらに店舗数の減少の結果として、男性客の美容室への流出も発生しています。そして実際の業務スキルが身に着くまでの期間の長さと、それまでの年収の不安定さも発生していました。

美容師の場合
美容師は逆に店舗数、就業人口とも増えました。こちらは「コンビニ」「歯科医院」「美容室」と呼ばれるようにむしろ店舗の数が多すぎ、過当競争気味となっています。理容室とは逆の現象ですが、問題の本質は似たようなものがあります。近年は髭剃りなどの機器の進化も進み、「シェービング」をしなくてもカットだけなら…ということで、数の多い美容室に行く男性も増えてきました。また美容室の方が客単価も高いということもあり、美容師の数が一方的に増えてきました。
ただ美容師も試験に受かるための技術と業務に直接かかわる技術の差があり過ぎ、業務スキルが身に着くまでの期間と、それまでの年収の不安定さも発生していました。 さらに店舗間の競争が激しく、一人前になってもなかなか昇給しない例も多く見かけます。クーポンによって絶え間ない集客をすれば、スタッフにリピーターが付き、身に着いた技術を元に起業してしまいます。育てたスタッフが新たなライバルになるという訳です。
理美容業界の変化

新業態の参入

こうしたことから、人手不足になって苦しくなったが利益率も減少してしまった、ニーズがあるのに閉店したなどの矛盾が発生する状況になりました。
しかしこの業界にも、マーケット掘り起こしによる変化が押し寄せています。

激安チェーンの隆盛
どの業界も、ユーザーの志向は「タイパ・コスパ第一主義」と「高度な要求に対応するフルサービス店舗」の二極化が進んでいます。
理容業界にも前者のニーズをつかむような「1000円カット」の大型チェーンが出来てきました。一人当たりの店舗面積を抑え、予約制をなくし回転率を上げ、カットのみに特化し、スタッフの教育期間を効率化することで、これまでの1/3~1/4程度の値段に押さえています。こういった店が都市部や郊外のショッピングモールを中心に急速に拡大しています。

シェアサロンの増加
「長期間の見習い期間」での収入の不安定さや「昇給率の鈍さ」から、早期に起業を考える人向けに、設備の全てが揃った美容サロンを貸し出すビジネスも増加しています。
起業を目指す美容師が一番に直面する問題が店舗物件探しであり初期投資です。長期のランニングコストも必要ですが、そのハードルを下げることができればリスクも少なく起業が可能です。

理美容業界への進路

学校側のカリキュラムと国家試験の見直し

これまで「国家試験突破」「技術指導」にウェイトが置かれていた理容師・美容師養成機関のカリキュラムですが、こうしたことから経営やビジネス展開に関する指導を行う学校も増えてきました。いくら技術が向上したところで、市場が飽和状態になればニーズに合ったビジネスを行わないと成長しません。そこで、ビジネスセンスを磨くカリキュラムも増えているのです。特にマーケティング能力など経営能力を身に付けさせる教育を行う学校が増えています。
さらに国家試験の科目自体の見直しも行われています。前述のように「オールウェーブセッティング」を廃止し、より時代に即した「まつエク」を導入するなど、就職してからの美容師としての育成期間を縮める試みもなされています。

理容・美容業界のこれから

現在は改善が必要な様々な課題がある業界ですが、どんな人にも必要であり、どうしても人間の技術が介在する職業です。衰退することはありませんが、今後さまざまな変化が起こるでしょう。

AI化の波
どの業界でもホットな話題がAI。理容・美容業界でもその波が来つつあります。カットやメイク後に変化する利用客の容姿の事前確認、肌質や年齢からセレクトするケア用品、ファッションの好みからの提案など、これまで需要が予想される割に実現が難しかったものが次々と具体化していくでしょう。

業態の変化
業務の効率化、人材育成の合理化、マーケティングの精度などを考えると、この先は店舗の大型化、チェーン店化も一層進み、投資額も増えていくと予想されます。

高収益化への戦略
店舗のコンセプトからトータルなコーディネイト、顧客の好みに対するアドバイス、髪質にあったケア製品などの知見を活かした、ファッショナブルかつ高付加価値な展開をする理容店が増えています。こうした店舗は「バーバー」と呼ばれ、客単価も高く高収益を出しています。理容師のセンスとブランディング、小回りの利く顧客対応で、大手ではできないキメの細かさが売りとなって業績を上げています。

顧客ニーズの細分化
高齢者や障がい者など移動が難しい人や、髪質や好みの違う外国人、多様化するジェンダーへの対応など、顧客ニーズは細分化していくと思われます。そうしたニーズに習熟した理容師・美容師の活躍も、今後広がっていくと思われます。マッサージや情報産業、飲食など異業種の参入も考えられます。

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